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に大きくなるため動揺低減効果が現れていると考えられる。
同様に図3.2.1-8は正面向波中S.S.4の上下加速度の計測結果であるが、原型と改良船の差は見られない。S.S.4の上下加速度は上下揺が支配的で縦揺の影響が小さい。原型と改良船型で上下揺には差が見られておらず、このためにS.S.4の上下加速度にも差が見られないと考えられる。
図3.2.1-9は波浪中抵抗増加の計測結果である。改良船型の縦揺が原型より小さくなる波長範囲で改良船型の抵抗増加が小さい。一方、船体運動の影響がほとんど無い短波長域でも改良船型の抵抗増加は小さく、計算値に比較して計測された抵抗増加が大きい。短波長域の計算値は船首部の水線面を太らせた改良船型の方がわずかではあるが抵抗増加が大きくなる傾向を示している。最近の研究成果として、船首部の波浪中抵抗増加は水線面より上方の船型が影響するという報告がある。図3.2.1-1に示した正面線図でわかるように本船の船首付近は水線面の上方で急激にその幅が広がっており、この影響が現れていることも考えられる。
以上の計測結果より、上下加速度は理論計算で検討した本改良の方向(船首部の水線面積増)で低減できることが検証できたと考える。
図3.2.1-10は不規則波中の上下加速度の標準偏差である。本図に示した試験結果とは、本試験で得られた規則波中応答関数を用いて不規則波中の標準偏差を計算した結果である。この計算にはITTCスペクトルを使用した。本図上段には上下加速度の船長方向分布を示すが、本試験で計測したS.S.4は上下加速度が最も小さい位置であることがわかる。本図の下段には船体前半部の水線面積係数と上下加速度の標準偏差の関係を示す。図3.2.1-2と同様の図であるがS.S.7 1/2については各種船型の計算結果を最小二乗近似して破線で示してある。この計算結果では改良船型の上下加速度は原型に比較して約15%減少している。しかし試験結果ではその減少量は約10%となっている。また上下加速度の絶対量は計算値に比べて10%ほど小さい。S.S.4においては計算結果、試験結果共に船型差は小さい。
2)減揺装置の効果
改良船型にアンチロ一リングタンク(以下ARTと記す)を搭載した場合の横波中試験結果を図3.2。1-11に示す。図中にはARTを作動させていない状態の試験結果と各試験状態に対応する理論計算値も示してある。なおART付きの理論計算はARTの内部流体の運動と船体運動を連性させて計算した結果である。
ARTの効果により横揺の大きい固有周期付近の波長/船長=2.0で応答が5.2から1.0まで8割程度減少している。固有周期(設計点)の短波長側ではART付きの応答がART無しの応答より僅かに大きくなっているが、固有周期からはずれているためその絶対量は小さい。一方、長波長側では波長/船長=3.0でもARTの効果が見られる。このように比較的広い範囲でART効果が得られており、多くの波長の波が混在する実際の海面でもAR

 

 

 

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